世界のリチウムイオン電池市場規模：主要動向と成長見通し

最終更新日:2025年8月19日 17:16

リチウムイオン電池市場は、電気自動車、再生可能エネルギー貯蔵システム、ポータブル電子機器の急速な普及に牽引され、過去10年間で爆発的な成長を遂げてきました。かつては広範なエネルギー貯蔵市場におけるニッチなセグメントと考えられていたリチウムイオン技術は、現在では世界的な脱炭素化の取り組みと電化戦略において中心的な役割を果たしています。この市場がセグメント、地域、そして技術を超えてどのように進化しているかを理解することは、クリーンエネルギー・イノベーションの未来に関する貴重な洞察をもたらします。

リチウムイオン電池市場規模概要

業界調査によると、世界のリチウムイオン電池市場は2024年に約1,071億4,000万米ドルと評価されています。 2032年には5,782億米ドル以上に大幅に拡大し、2025年から2032年にかけて23.22%という堅調な年平均成長率（CAGR）を示すと予測されています。この驚異的な拡大は、高性能エネルギー貯蔵ソリューションに対する需要の高まりと、リチウムイオン電池をより安全、安価、そして効率的にする急速な技術進歩の両方を反映しています。

市場の加速的な成長軌道は、主に自動車、民生用電子機器、エネルギー貯蔵システムという3 つの主要なアプリケーション分野によって形作られており、これら 3 つの分野が世界の需要の大部分を占めています。

リチウムイオン電池市場規模が急成長している理由

1. 電気自動車が需要を牽引

主要市場では電気自動車（EV）の販売が急増しています。2023年だけでも、世界で過去最高の1,400万台のEVが登録され、路上を走る電気自動車の総数は約4,000万台に達します。世界中の自動車メーカーは、政府の優遇措置、厳格な排出ガス規制、急速充電インフラの整備に支えられ、新モデルを次々と発売しています。

優れたエネルギー密度と長い寿命サイクルを備えたリチウムイオン電池は、EVにとって依然として最適な技術です。その結果、自動車部門が需要を牽引し、リチウムイオン電池市場全体の規模に大きく貢献しています。

2. 再生可能エネルギー貯蔵システムの利用拡大

リチウムイオン電池は、太陽光や風力といった変動の激しい再生可能エネルギー源から発電されたエネルギーを貯蔵する上でも重要な役割を果たしています。大規模な蓄電システム（BESS）は、電力系統の安定化とバックアップ電源の供給を目的として、世界中で設置が進んでいます。

カリフォルニア州のモスランディング・エネルギー貯蔵施設（ 750MW/3000MWhと現在世界最大級の規模を誇ります）のようなプロジェクトは、電力会社がグリッドスケールの設備にリチウムイオン電池を採用している好例です。再生可能エネルギーの設置が拡大するにつれ、費用対効果の高いリチウムイオン蓄電ソリューションへの需要も高まります。

3. ポータブル電子機器は依然として巨大な市場である

民生用電子機器は、リチウムイオン電池市場のもう一つの基幹セグメントを構成しています。スマートフォン、タブレット、ノートパソコン、ウェアラブル端末、ワイヤレスアクセサリはすべて、その軽量性と高い電力密度により、リチウムイオン技術に大きく依存しています。世界中のライフスタイルがモバイル化とデジタル化を加速する中で、民生用電子機器セクターは引き続き安定的に成長を続ける需要源となるでしょう。

テクノロジーのセグメンテーション — 採用を促進するものは何ですか?

• コバルト酸リチウム（LCO）

歴史的に、コバルト酸リチウム電池は、その高いエネルギー密度により、スマートフォン、ノートパソコン、ポータブル電子機器に広く使用されてきました。しかし、新しい化学組成の電池と比較すると、熱安定性と安全性は比較的低いという欠点があります。

• リン酸鉄リチウム（LFP）

リン酸鉄リチウム（LFP）電池は、目覚ましい勢いを増しています。優れた熱安定性、長いサイクル寿命、そして優れた安全性を特徴としており、電気バス、商用車、そして定置型エネルギー貯蔵システムに最適です。LFPは近年、リチウムイオン電池市場において最も急成長を遂げている化学分野として台頭しています。

• リチウムニッケルマンガンコバルト（NMC）およびリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物（NCA）

NMCおよびNCAは、高いエネルギー密度、適正なコスト、そして優れた安全性のバランスが評価され、電気自動車で広く使用されています。テスラ、パナソニック、LG化学といった大手EVメーカーは、エネルギー密度の高いバッテリーパックにこれらの配合を採用しています。

• その他の化学

マンガン酸リチウム (LMO)やチタン酸リチウム (LTO)などの化学物質は、電動工具、急速充電アプリケーション、産業用ストレージのニッチな役割を果たし、充電速度の向上や低温性能の改善などの具体的な利点を提供します。

地域市場の洞察

アジア太平洋地域 — 誰もが認めるリーダー

アジア太平洋地域は、リチウムイオン電池市場全体の半分以上を占め、2024年には世界シェアの約54.64%を占める見込みです。中国は依然として生産の中心地であり、 CATL、BYD、パナソニック、サムスンSDIといった大手電池メーカーが市場を牽引しています。中国におけるEVの堅調な普及と、日本と韓国の成熟したエレクトロニクス産業が相まって、アジア太平洋地域は世界有数のハブとしての地位を確立しています。

インドの電気自動車の普及と現地のバッテリー製造能力の拡大への意欲も、予測期間中に地域市場をさらに拡大すると予想されます。

北米 — 生産規模の拡大

北米のリチウムイオン電池市場は、米国とカナダにおけるEV販売の増加、国内サプライチェーン開発への注力、そして系統規模のエネルギー貯蔵への多額の投資を背景に、急速に拡大しています。テスラ、GM、パナソニックなどのパートナー企業が建設中の新しい電池製造工場により、アジアからの輸入への依存度が低下することが期待されています。

欧州 — グリーンエネルギー政策が成長を促進

欧州諸国は、ネットゼロエミッションへの迅速な移行を継続的に支援しており、リチウムイオン電池をエネルギー転換の重要な要素として位置付けています。野心的な排出削減目標、EV充電ネットワークの拡大、そして様々な研究プログラム（欧州バッテリーアライアンスなど）が、この地域の力強い成長を支えています。

ラテンアメリカ、中東、アフリカ — 新たな機会

ラテンアメリカおよび中東・アフリカにおけるリチウムイオン電池の需要は、現時点では絶対規模こそ小さいものの、着実に増加する見込みです。大規模なインフラプロジェクト、通信分野の拡大、そして再生可能エネルギーへの投資の増加は、将来の普及に向けた基盤を築いています。

市場を形成する主要な業界動向

コバルトフリー電池のイノベーション：企業はコスト削減とサプライチェーンの懸念に対処するため、コバルトフリー電池の開発をますます進めています。東芝の5Vクラスのコバルトフリー正極材料は注目すべき例です。
ナトリウムイオンとの競争: 新興のナトリウムイオン電池技術は、コストが低く、より豊富な材料を使用することから、特定のストレージニーズに対する潜在的な代替手段として注目を集めています。
政府のインセンティブと規制: カーボンニュートラル、再生可能エネルギー、クリーンな輸送に関する政策は、リチウムイオン電池市場の成長を支援する環境を作り出しています。
サプライチェーンのローカリゼーション: 企業は、回復力を確保するために、特に北米とヨーロッパ全体でバッテリー生産をローカライズするための戦略的な動きを行っています。

市場成長が直面する課題

リチウムイオン電池部門は、明るい見通しにもかかわらず、将来の成長に影響を及ぼす可能性のあるいくつかの障害に直面しています。

原材料の制約: リチウム、コバルト、ニッケルなどの主要原料は地理的に限定された地域から調達されているため、地政学的リスクや供給のボトルネックが生じます。
高額な初期資本コスト: バッテリーのギガファクトリーを建設し、生産ラインの容量を拡大するには、数十億ドルの投資が必要です。
代替技術: 固体電池、ナトリウムイオン、その他の技術の急速な進歩により、最終的には市場シェアを獲得する可能性があります。
寿命とリサイクルの問題: 使用済み LIB の増加を持続的に管理するには、バッテリーの廃棄とリサイクルのインフラストラクチャを大幅に改善する必要があります。

将来の見通しと市場機会

今後、リチウムイオン電池市場は急速に拡大し続けると予想されます。製造技術の進歩により、バッテリーパックの価格が下がり、EVの低価格化と大規模エネルギー貯蔵の実現可能性が高まります。

主な機会:

EV 車両の拡大: 公共交通機関の電化、二輪車、三輪車、大型トラックの増加により、新たな需要が生まれます。
グリッドサービスとマイクログリッド: 柔軟なグリッド運用をサポートするエネルギー貯蔵ソリューションにおいて、リチウムイオン電池がより大きな役割を果たします。
工業および商業用途: フォークリフト、倉庫自動化、ロボット工学、電動工具では、リチウムイオン電池技術の採用が増えています。
地域的な製造業の拡大：インド、米国、ヨーロッパにおける新しいギガファクトリーなどの投資により、サプライチェーンがローカライズされ、全体的な生産量が増加します。

詳細情報: https://www.fortunebusinessinsights.com/industry-reports/lithium-ion-battery-market-100123

結論

世界のリチウムイオン電池市場は、電動モビリティ、再生可能エネルギー、デジタルコネクティビティといった変革的なトレンドに牽引され、急速に拡大しています。市場規模は2025年の約1,340億米ドルから2032年には5,780億米ドル以上に拡大すると予測されており、現代のエネルギー市場において最もダイナミックで戦略的に重要な技術の一つであり続けています。

化学、コスト効率、持続可能性、そして現地生産の分野において革新を起こす企業は、今後10年間、この高成長市場から価値を獲得する上で最適な立場にあります。世界がより環境に優しく、よりスマートで、よりレジリエントなエネルギーシステムへと進化を続ける中で、リチウムイオン電池は今後もその移行の中心であり続けるでしょう。